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河裾 厚男; 深谷 有喜*; 林 和彦; 橋本 美絵; 一宮 彪彦
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3924 - 3927, 2007/09
よく収束された高平行な陽電子ビームを物質表面に小角入射させると全反射が起こる。そのため、反射高速陽電子回折(RHEPD)は最表面構造をバルクの影響なく決定するのに適した方法である。電磁レンズを用いることで、われわれは以前よりもコヒーレントな陽電子ビームを形成した。われわれは、Si-77表面からの陽電子回折図形が電子回折図形と強度分布において大きく異なっていることを見いだした。その違いは、表面における陽電子の熱散漫散乱を考慮することで合理的に説明できることがわかった。さらなる応用として、われわれはSi-Ag超薄膜の相転移を研究し、表面敏感な陽電子回折強度が特徴的な温度依存性を示すことを見いだした。動力学回折理論に基づき、その温度依存性は秩序・無秩序相転移によって説明できることが解明された。この結果は、表面分野において長い間論争となっていた問題に決着をつけた。さらに最近になり、われわれは陽電子と表面の相互作用が、特に非弾性散乱過程に関して、電子の場合とは異なることを見いだした。
Yu, R.; 前川 雅樹; 三輪 幸夫; 平出 哲也; 西村 昭彦; 河裾 厚男
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3577 - 3580, 2007/09
被引用回数:4 パーセンタイル:73.25(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)空間分解能30mの陽電子マイクロビームを用いて、ステンレス材の機械的疲労破壊及び応力腐食割れ(SCC)を起こしたクラックの1次元及び2次元走査を行った。測定結果より、この2種類のクラック損傷には異なるメカニズムが存在していると思われる。通常は亀裂生成に伴い、機械的疲労によるクラックの近辺には転位や欠陥の生成が起こると思われるので、511keVの陽電子消滅線のドップラー拡がりは狭小化することが期待される(S(crack)/S(bulk)=1.01)。しかしながら、SCCの場合にはドップラー幅の増大が観測された(S(crack)/S(bulk)=0.97)。そのような現象は、測定試料の微視的組成の違い及び微視的構造の違いに起因すると思われる。
前川 雅樹; Yu, R.; 河裾 厚男
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.4016 - 4019, 2007/09
被引用回数:4 パーセンタイル:73.25(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)陽電子マイクロビームを用いることで、表面近傍に存在する空孔型欠陥の空間分布や微小領域の欠陥構造の評価が可能となる。現在、われわれは陽電子ビームを10m以下に収束し、試料の2次元顕微走査を行うビーム装置の開発を進めている。ビームの収束には、市販されている走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる。最終的なビーム径を小さくするためには、入射ビームの径を小さくすることが重要である。そのために小型線源と高効率な固体希ガスモデレーターを利用した陽電子銃の開発と設計を行っている。また陽電子消滅寿命測定のために、高周波電界を用いたビームパルス化装置の設計も行っている。装置の製作に先立って、テストベンチでの収束陽電子ビームの形成と特性評価を行ったところ、陽電子線源として密封Na-22(有効径4mm)を用いた場合、10keVで80mのビーム径が得られた。これにより、有効径1mm以下の小型線源を利用することで10mのビーム径が達成できるものと推測される。
平出 哲也; 鈴木 直毅*; 斎藤 文修*; 兵頭 俊夫*
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3714 - 3717, 2007/09
被引用回数:6 パーセンタイル:82.36(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)分子性固体中では、低温において捕捉電子と自由電子によるポジトロニウム形成が起こる。従来考えられてきた陽電子の運動エネルギーによる吸熱反応を伴うOre過程によるポジトロニウム形成,あるいは入射陽電子自体が引き起こすイオン化により生じる過剰電子がもたらすスパー過程によるポジトロニウム形成の機構は、いずれも「速い反応」である。しかし、最近、われわれが見いだした捕捉電子と自由陽電子から生じるポジトロニウムは、陽電子の入射後ある程度時間が経ってから生じることが予測され、われわれはこの遅延ポジトロニウム形成を、消滅寿命と消滅時の運動量の相関を測定することで実験的に検証した。今回、われわれは、測定で得られた寿命-運動量の相関に基づき、陽電子反応モデルの特定を試みた。すなわち、Ore過程やスパー過程による「速い」ポジトロニウム形成を逃れた自由陽電子が、その後でポジトロニウムを形成する場合には、自由陽電子の局在化を考慮するモデルが妥当との結果が得られた。これにより、寿命-運動量の相関をうまく説明できた。
Chen, Z. Q.*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 楢本 洋
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3646 - 3649, 2007/09
被引用回数:2 パーセンタイル:56.83(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)酸化亜鉛に対してボロン,酸素,アルミ,リンイオンを4E+15/cm注入し、生成した格子欠陥の熱回復挙動を陽電子ビームを用いて調べた。イオン注入後、イオン種に無関係にSパラメータの増加が観測された。しかし、空孔クラスターの回復挙動はイオン種に大きく依存することが明らかになった。酸素イオン注入の場合空孔クラスターは700Cの熱処理で完全に消失した。酸素より軽い質量のボロン注入では、空孔クラスターはマイクロボイドに成長し900Cで消失した。アルミイオン注入の場合はさらに大きな寸法のマイクロボイドの成長が見られたが、同様に900Cでそれらは消失した。リンイオン注入の場合は、空孔集合体化は抑制される一方で、それらは1100Cまで安定に存在することが明らかになった。
堀 史説*; 福住 正文*; 河裾 厚男; 図子 善大*; 知見 康弘; 石川 法人; 岩瀬 彰宏*
Physica Status Solidi (C), 4(10), p.3530 - 3533, 2007/09
被引用回数:0 パーセンタイル:0.07(Physics, Atomic, Molecular & Chemical)最近われわれはB2型のFe-Rh合金への100-200MeVの重イオン照射により反磁性-強磁性転移温度が低下することを見いだした。200MeVのXeイオンの通過に伴い表層付近に発生する欠陥を陽電子ビームを用いたドップラー拡がり測定により評価した。ドップラー拡がりスペクトルのSパラメータは照射量とともに増大し、照射量が5E+12 ions/cmで飽和することが明らかになった。これより原子空孔の濃度を評価したところ、TRIMシミュレーションから期待されるよりも、極めて低いことがわかった。この結果から、アンチサイト型欠陥が主要な欠陥であり、強磁性状態を安定化させるものと解釈できる。
河裾 厚男; 前川 雅樹; 藤浪 真紀*; 小熊 幸一*; 赤羽 隆史*; 渡辺 和也*; 松川 和人*
no journal, ,
遷移金属不純物はシリコン中に意図せず混入しデバイスの電気特性に悪影響を与える。ゲッタリング技術は格子欠陥を利用した遷移金属不純物の除去法として有効であり、格子欠陥と遷移金属不純物の相互作用を研究することは大切である。これまで積層欠陥や析出物などの拡張欠陥が透過電顕によって研究されてきた。また、不純物の深さ分布は二次イオン質量分析によりわかる。しかしこれらの方法では欠陥-不純物相互作用に関する知見はわからない。陽電子消滅は欠陥と不純物の複合体についての情報を与える。ここではCZ-Siに対して表面から3MeVSiイオンを1E+14/cm、裏面から200keVCuイオンを1E+14/cm注入し、熱処理を行った。陽電子ビームを用いた同時計数ドップラー拡がり測定を行い、空孔クラスターによるCu不純物のゲッタリング効果を調べた。500Cの熱処理では空孔クラスターの成長が見られたが、銅不純物の影響は観測されなかった。600Cの熱処理後ではドップラー拡がりスペクトルにCu不純物の影響が現れた。このことから、空孔クラスターがCu不純物を捕獲するものと考えられる。700CではCuは空孔クラスターから離脱し、酸素原子が空孔集合体と結合することがわかった。